ミステル君は、何かとその、口を使うのが、好きみたいだった。
会う度にキスしてくれるのはともかく、私が怪我をすれば傷口を舐めてくれて、私が泣けばキスで涙を拭ってくれるのは、なんだか普通じゃない気がする。
もちろん全部嬉しいけれど、どうしても恥ずかしくて。怪我や涙は治まっても、ドキドキしすぎて寿命が縮まりそうだった。
最初は犬、みたいって思ってたけど、なんとなくしっくりこない。
犬、というよりも、もっと、こう。


「うーん……」
「どうしたんですか? 突然、眉を顰めて」
「ミステル君てさあ……犬、って感じではないよね」
「はい?」


太陽の光を透かしてキラキラ輝く金髪とか、永遠に見つめていたい程綺麗な瞳とか。
犬というよりももっとこう、美しくて儚げな生き物、だと思う。


「よく分かりませんが、まあ……ボクのことを考えてくれていたならいいです。他のことだったら許しませんが」
「私は今ミステル君のことで頭がいっぱいだよ! とても難題なの!」
「なんでしょう、嬉しいはずなのに何故か失礼なことを思われているような……」
「失礼なことなんて考えてな……あ」
「おや」


ひらり、ふわり。

私がどのくらい必死に真面目に考えているのか説明しようとしていたら、白いものが視界に入った。
白い、チョウチョ。ミステル君の肩に止まったそれを見つめていると、すっと心のモヤが晴れて。
こんなところにいたじゃない。ねえ、ミステル君。


「ミステル君って、チョウチョだ」
「だから、何なんですか、本当に」
「チョウチョだよ。ひらひらしてて、綺麗で、液体を吸うのが好きなの」


自分を花だなんて言うのは図々しすぎるけど。けれど花の蜜を一心に吸うチョウチョの姿は、どうしてだかミステル君にとても似ていた。美しく妖しい、その姿は。


「よく分かりませんが……まあでも、あっているのではないでしょうか」
「え、分かってくれるの?」
「今、よく分からないと言ったのですが……ボクが言いたいのはですね」

ふいに、ミステル君の肩に止まっていた白いチョウチョが、ひらりとどこかへ飛んで行く。
それとは反対に大きな金色のチョウチョはふわりと私にとまって、また何かを求めて私を吸った。


「あなたという花の蜜がなければ生きていけないところが、似ていると思ったのです」





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ミステル君マジキス魔(褒め言葉)

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