「ねぇ、ボクも一緒に探してあげようか?」



それは、純粋な好意で言った言葉だった。
顔見知り以上の人間が困っていたら、手を貸そうとするくらいの心はボクにだってある。

そしてここは普通、素直に「ありがとう」って言って一緒に探してもらうものじゃないかなぁとボクは思うんだけど、生憎彼はあまのじゃく。
残念ながら素直になれない人種なワケで、まぁそこの所はボクだってよく分かっている。
はなから素直な答えなんて期待していない。


案の定彼は、ふざけるなと何故か逆ギレ。


「うるさいっ! よけいな事をするな! 探したら承知しないぞ!」

「ふーん、じゃあ何、ボクに見られたらまずい事でも書いてあるの?
 もしかして、好きな子の事でも書いてんのかな〜?」


だからボクもちょっとからかってやろうと思って言ってみたんだけど、あらまあ、これは。
適当に言ってみたんだけど、どうやらドンピシャだったらしい。
目の前の人間はみるみる内に赤くなっていって、言葉に詰まってしまった。

あーあ、なんてベタに分かりやすいヤツなんだろう。


「ふふん、そーゆー事ね。
 大丈夫大丈夫、ボクは他人の日記を勝手に見るほど悪趣味じゃないよ。
 じゃ、ちょっと探してくるね〜」


待てという彼の制止なんか無視して、ボクはニヤリと笑いながら、役場の扉をパタンと閉める。

空は灰色の雲に覆われ、もうすぐ雨が降りそうだ。
もし外に落ちているのなら、早く探さないと大変な事になるだろう。


(……好きな子、ねぇ……)


ギルも意外と乙女ちっくだなぁ、と思いつつ。
なんだか心がモヤモヤするのは、きっとこの曇り空のせいだという事にしておいた。










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やすらぎ初創作がこれでした。ギルの日記ネタ。ギルの好きな人が無意識に気になってモヤモヤ。でも自分では気付かないアカリさん。
アカリは公式設定で「ボーイッシュ」の文字を見たときからボクっ娘だと決めてました。たまにはボクっ娘な牧場主がいてもいいじゃない。


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