「ミステル君は、ずるいなあ。 偽物の笑顔で笑ってても、そんなにキラキラしてるなんて」 誰にでも受け入れられる笑顔。 明るい栗色の髪、ふわりとウェーブのかかった女性らしい髪型。 派手すぎず地味すぎない、清楚で無難なワンピース。 周りから孤立しない為の武装をした彼女は、彼女曰く偽物らしい。 「今では本当の私がどんな子だったか、思い出せないの」 ボクは『本物』が好きだった。 世の中に溢れる消耗品ではなくて、それにしかない価値を持つ唯一の至高品。 嘘でつくられた模造品を見抜く目には自信があった。なのに。 「……偽物が本物になれる方法を、教えてさしあげましょうか?」 不思議そうな顔をする彼女に、手を伸ばす。 今はどうしてかこの、目の前の偽物がたまらなく欲しいと思った。 「偽物だって、それを本当に愛する人がいれば本物……いえ、それ以上の価値だって生まれます。 あくまで『その人にとっては』ですが」 触れた頬に広がる朱色。期待を滲ませる眼差し。 あなたがそれを嘘だと言うのなら、それでもいい。 「私、本物になりたいの、ミステル君」 「ボクはたとえ偽物でも、あなたが好きですよ。ミノリさん」 むしろ本物になんてならなくていい。 皆に愛される本物よりも、ボクだけの、 「じゃあ、私をあなたのものにして。 ミステル君だけでもいいから、私を本物にして」 ボクだけが価値を知っている、ボク以外には見向きもされない、偽物でいて欲しい。 けれど彼女の表情は告白というよりも懇願だった。それは相手が自分ではなくてもいいのではないかという不安を、ボクに抱かせる。 嬉しい事を言われているはずなのに、胸が焼かれていくようだった。 どうやらこの偽物さんは、本物よりも手中に収めるのに苦労するかもしれない。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 都会派養殖天然ミノリちゃん妄想を拗らせた結果 BACK |