「だからせめて……『メルネス』じゃなくて……。 たまにでいいから、『シャーリィ』って呼んで欲しいんです」 ――「メルネス」と呼ばれる度に、その言葉の持つ重さに潰されてしまいそうになるから。 皆に必要とされてるのは「シャーリィ」じゃなくて、「メルネス」なんだって。 改めて思い知らされる気がするから。 彼女は俯きながら、そう呟いた。 その表情は酷く悲しそうで、明るい笑顔が似合う彼女には似合わない。 彼女にはいつものように笑って欲しかった。 その為に自分が出来る事なら何でもしたかった。 「……その願いは、いくら『メルネス』の願いでも聞く事はできない」 しかし、それだけは自分には出来なかった。出来ないのだ。 「……っ! ……どうして……ですか……?」 「…………失礼する」 顔を上げてこちらを見つめる彼女の表情はやっぱり酷く傷付いた様子で、その視線に耐えられず。 彼女に背を向け、逃げるようにその場から去った。 ……彼女は、「メルネス」。 自分が守るべき存在は「メルネス」で、「シャーリィ」という少女ではない。 敬愛の念を向けることはあっても、決してそれ以外の感情を持ってはいけない。 でも。 「メルネス」ではなくて、その少女の名前を呼んでしまったら。 何かが崩れてしまいそうで怖かった。 彼女は自分が仕えるべき人物ではなくて、一人の、なんてことない普通の少女なのだと気付かされてしまいそうで。 それに気付いたら、きっと自分はもう彼女の傍にはいられないだろう。 「メルネス」の傍にいるべき人物は自分でも、「シャーリィ」の隣にいられるのは、自分ではないのだ。 「シャーリィ」が隣にいて欲しいと願う人物は……自分ではないから。 彼女は「メルネス」だから自分は傍にいる。 そう思うことが……自分の、最後の逃げ道だった。 「メルネス」 (ああ、やっぱりアイツなんて消えてしまえばいいのに) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 TOLはとある人に影響されてうっかりワルシャリが好きになってしまったりして。マイナーなのは分かってるよぉ! BACK |