彼は、外を見ていた。

彼はずっと長い間、一日中真っ白なベッドの上――すなわち、病院で入院している。
今日は珍しく彼の友人が彼を訪ねて来て、見舞品に林檎を持って来てくれた。

そして、今現在。
彼はただぼーっと、窓の外を見ている。
林檎はベッドのテーブルの上。


「ねぇ、お兄ちゃん」


ふいに、彼の後ろで声がした。

先程までは、確かに誰もいなかったのに。
だけどいつからか、少女はそこにいた。

この国では珍しい金色の髪に、青い瞳。
少女の年齢にしては珍しい、真っ黒な服。
しかしそれによって柔らかく繊細な金の髪はより一層引き立てられ、少女はとても愛らしく見えた。


「お兄ちゃん、あのね、おなかすいたの。
お兄ちゃんの――、食べてもいい?」


驚いて何も言えなかった彼は、その言葉で我に返った。
切なそうに彼を見つめてくる少女を怯えさせないよう、なるべく優しい笑顔を作る。

「お嬢ちゃん、お父さんとお母さんは?」
「しんじゃったんだって。おいしゃさまが言ってた」

俯き加減に呟く少女。
それを聞いた途端、彼はなんとも言えない表情になった。


――ここは病院だ。不幸にも、命を落とす人間だっているのだ。


分かってはいるが、神はなんて残酷なのだろう。
まだこんなにも幼く、親の保護を受けねばならない少女を、たった一人にするなんて。


「……わたし、おなかすいたの。
お兄ちゃんの――、食べちゃだめ?」


一部が聞こえなかったが、きっとこの林檎の事だろう。
この部屋にそれ以外の食べ物はないのだから。

――林檎一つで、この少女が少しでも悲しみを忘れられるなら。
そう思い彼は、再び笑顔を作って、喜んで少女にそれを提供する事にした。

すると少女も初めて笑顔を見せ、喜んだ。
少女の純粋な笑顔に微笑みながら、林檎を切ろうと果物ナイフに手をかけた時、





彼は、パタリとその場に倒れ、動かなくなった。





結果、妙な静けさの残ったその部屋には、少女が一人残された。
しかし少女は満足そうな顔をして、とても無邪気に笑っている。

「ありがとう! お兄ちゃんの“たましい”、とってもおいしかったよ!」















Fin





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「彼」と死神の女の子のお話、かな?死神の女の子は魂を食べちゃうのです。
ぼんやりと思いついて、昔ブログに書き殴った話。の割に結構気に入ってたり。


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