ある世界では今、一つのニュースが世界を騒がせていました。 なんと、クラウン王国のアリア姫が、魔王に攫われてしまったというのです。 困ったクラウン王国の王様は、彼女を助けた者は、願いをなんでも叶えてやるとのおふれを出しました。 それを聞いた数々の冒険者達が、次々と旅に出ました。 しかし、誰もお姫様は助ける事ができなかったと言います。 それもそのはず。 魔王がいるお城に行くは、険しい谷を越え、深い森を抜け、そして氷でできた洞窟を抜けなければいけないのです。 その厳しい道のりに数々の冒険者達は傷つき、時には命を失ってしまった者もいました。 そして次第に、お姫様を助けに行こうとする者はいなくなっていったのです。 王様は、とても困りました。 このままでは、アリア姫は魔王に何をされるか分かりません。 かといって、もう勇気ある冒険者はいないのです。 しかし、王様がもう駄目かと半分諦めかけていたところに、二人の青年が現れました。 一人は、いかにも田舎の村で育ったという風体の、だけどそれ故か真っ直ぐな目をした青年。 一人は、その青年とは対照的に中性的な美しさを持つ、物腰柔らかな青年。 なんと彼らは、アリア姫を助けに行ってくれると言うのです! 王様はとても喜び、彼らを最後の希望だとしてできうる限りの援助をした後、勇気ある若者二人を送り出しました。 そして、その事を知った魔王。 もう自分の所に来る人間はいないと思っていたので、それを聞いてとても驚きました。 ですがそのままじっとしている魔王ではありません。 魔王の方も最後の勇者達を邪魔してやろうと、手段を考えるのでした。 このお話は、勇者二人が旅を通して成長していく物語……ではなく。 勇者を邪魔しようと、ある考えに至った魔王のお話です。 reverse adventure! 〜第一話・魔王の策略〜 いかにもおどろおどろしく、正直悪趣味。いかにも魔王らしい城です。 そんな城の最上階、真っ赤で華美な、やっぱり「いかにも」という感じの椅子に一人の男が座っていました。 後ろで一つに束ねられた漆黒の長い髪、血のように真っ赤な瞳。頭に生えた二本の角。そして全身を覆う黒いマント。 この男が魔王なのでしょうか。お約束にのっとって顔だけは結構美形の様です。 「なぁ、ローズよ」 「はい、なんでしょうかルーン様」 魔王――どうやらルーンという名前の様です――が傍にいた女性に話しかけると、彼女は律儀に跪いて応えました。 ローズという名らしいその女性は、真っ赤な髪をサイドで三つ編みにしており、はっとするほど綺麗な緑の瞳を持ち、眼鏡をかけています。 きりっとした表情がより一層彼女を引き立て、街を歩けば男の人はみんな彼女を振り返る事でしょう。 しかし彼女は、魔王ルーンに対するその態度から、彼の手下か何かのようです。 「先日最後の勇者がこちらへ向かっていると言ったが……どう思う?」 「そうですね。一見害はなさそうに見えますが、このままお約束的流れで行くと、死闘の末にルーン様が負けるという結果になるかと」 「うむ、我も同じ事を思っていた。いつの時代でもどうせ無力だと油断していた魔王が負けるのだ」 ルーンの問いにローズが律儀に応えると、ルーンもうんうん、とうなずきました。 その様子にローズは話を更に続けます。 「そうです。まぁ魔王が天下をとるなんて、よい子のド○クエ的によくないですからね」 「元も子もないな。しかし我はどちらかと言うと、RPGはファ○ナルファ○タジー派なのだが」 「何を言いますか。RPGの代表はド○クエです。ファ○ナルファ○タジーなんて邪道です」 「お前こそ何を言うか。ファ○ナルファ○タジーの方がキャラもストーリーも深い。 ド○クエなぞただダンジョンを探検して魔王を倒してハイ終わり、ではないか」 「違います、最近のド○クエはキャラもストーリーも進化しているんですよ。 ファ○ナルファ○タジーこそ、最近ファンの間での評判がよくないみたいじゃないですか?」 「それはそうかもしれないが、それは一部だけの事。やはりRPGの最高峰は……」 なにやら別の方向へ話がずれる二人。というか魔王もRPGやるんですか? 「……ごほん、そろそろ話を戻しましょうか。これ以上続けていると、本質を見失ってしまいそうです」 「そうだな、今大切なのは、その最後の勇者に対してどのような策を仕掛けるか、だな」 「ええ。最後のツメを甘くすると、人間誰しも足下をすくわれるものです」 「ああ。……ところで、我に一つ案があるのだが」 「? どんな案でしょうか?」 真剣に聞き返すローズに、ルーンは本来の問いには答えず、代わりに子供になぞなぞを出すような口調で彼女に問いかけました。 「ローズよ。RPGで何故最終的には魔王が負けるか分かるか?」 「なんですかいきなり。だって魔王倒さないとクリアにならないじゃないですか」 「それはもういい。もっと別の視点だ!」 「本当なんなんですか……」とぶつぶつ言いながら、それでも最後には素直に降参するローズ。 すると彼は得意そうに、そしていたって真面目な顔をして、 「簡単な事だ。 勇者は旅の途中でレベルアップをし、段々と強くなっていくが、魔王は自分の城にこもっているだけ。 それでは必ず、いつか勇者に追い越されてしまうというものだ」 「まぁ、そう言われれば……」 「そこで、だ」 更にびしぃっ、と指を突きつけながら彼は、 「魔王だって、旅に出れば良いのだよ」 我ながらなんてナイスアイディア!という風に言うのでした。 これにはローズも驚いたようです。むしろ若干呆れています。 そんな彼女を気にすることなく、彼は補足説明をしだしました。 「一番最初の時点では、魔王とかけだし勇者なら、魔王の方が格段に強いはずだ。 ならば魔王も旅に出てレベルアップをして更に強くなり、そして勇者が強くなりきる前……すなわち旅の途中で倒してしまえばいい!」 得意げに語るルーンにローズは何も言わず、ため息をつくだけでした。 しかしそれはローズにとってはいつもの事のようで、 「はぁ、分かりましたよ……。どうせ私が何を言っても聞かないんでしょうしね……。 まぁ障害は早くに消しておくに越した事はないですし……」 やれやれ、と言った表情で諦めたような顔をしました。なんだかんだ言っても、極力魔王の意見は尊重してあげるようです。 それに「やはりお前もそう思うか!」と一人突っ走りぎみのルーンは、既に旅支度をはじめようとしていました。 彼のそんな様子にローズは、慌てず騒がず冷静にツッコミを入れます。 「お待ちください、ルーン様。いかにも怪しい黒マントに、その上頭の角。 その格好でそのまま旅に出たら、世界の中心でアイアム魔王と叫んでいるようなものですよ」 「そうか、そう言われればそうだな! では、どうすればいいのだ?」 「今日、私がこれから街まで行って、人間の服を買ってきます。私なら人間の街に行ってもなんの問題もありません。 その間ルーン様は旅支度を調え、明日出発する事にしましょう」 「了承した。本当にローズ、お前は頭の回るやつだな」 魔王ルーンのデキる部下ローズ、一度覚悟を決めると、次の行動を決めるのは早いようです。 流石お馬鹿な……おっと失礼、少々頭脳面では弱いルーンを助けているだけはありますね。 まぁそれはさておき、(一応)主君の賛辞にクールな彼女も少し微笑みそして、 「ありがとうございます。……それでは、私は行ってきます故」 「ああ、頼む」 「ルーン様は旅支度をお願いしますよ……ワープ!」 ワープ魔法で街に出かけました。 残されたルーンは、旅支度を調えます。 狂いだしたお約束と言う名の歯車は、最後にはどうなってしまうのでしょうか? NEXT BACK |