「これなら大丈夫ですね。どこからどう見ても通行人A程度の影の薄い存在にしか見えません」
「それも少々悲しいんだが……」
「我が儘言わないでください。本来の目的をお忘れですか? あまり目立つと困るんですよ、私達?」
「分かっている、分かっているとも! ……おお、しかし今日は快晴だな。旅立ちの日としては丁度良い」
「勇者だったら丁度良いのかもしれませんが、魔王が言っても全然説得力ありませんよ」
「……なぁ、お前はどうしてそういちいち我に釘を刺すのだ?」
「別に釘を刺したつもりはありません、事実を述べたまでです。……ところでルーン様」
「なんだ?」

「攫ってきた王女は……。旅に出ている間、どうするおつもりですか?」





reverse adventure!
〜第二話・王女様のお守り役〜


人間らしい服を着て、ローズ曰くすっかり通行人Aに化けた魔王ルーン。
ローズは元から人間なので、問題なし。
道具や武器、それからお金も用意して。旅の準備もばっちりです。

その上本日は晴天なり。
旅立つにはなんとふさわしい日でしょう!

……しかし旅立つ前に一つ、どうするか決めておかないといけない事がありました。
クラウン王国から攫って来た、アリア姫の事です。
彼女は、いわば人質です。
旅に出ている間に逃げられたりしたら困りますし、また誰かが助けに来ても困ります。


「いや、だがしかし……。
腰抜けの人間共はもう最後の二人以外は来ないであろうし、あんな王宮に閉じこめられて育った娘が、一人で逃げられると思うか?」
「……ルーン様、あなた馬鹿ですか?
いいですか、今はピー○姫だって、かつて攫われた自分を助けてくれた男を助けるために、旅に出るような時代なんですよ?
それにあの娘、魔法が使えます。分からなかったんですか?」


心配いらないと言った様子のルーンに、やれやれと呆れた様子で首を振り、畳み掛けるように彼の発言を斬り捨てるローズ。
その様子にルーンは、少なからずダメージを受けたよう。


「あぁ、まぁお前の言うことは正しい。分かる。しかし仮にも主君に『馬鹿』はどうなのだ?」
「そうですね、すいません。次からはもっとオブラードに包んで言うようにします」
「結局また我を馬鹿呼ばわりする気満々ではないか。……まぁいい、それではお前には何か案があるのか?」
「キーラとルーラに、任せましょう」


しかしその二つの名前を聞いた途端、ルーンは先程よりも明らかに嫌な顔をしました。

「あの二人……ルーラはともかく、小娘の方は苦手だ……」
「どうしてですか? 二人とも忠実でいい部下ではありませんか。
それに実力の方も十分です。あの二人になら、留守を預けても心配ないでしょう」

余程関わりたくないのか、それでも納得いかない様子のルーン。
しかしそんな上司の意見はあっさり無視し、ローズは「キーラ! ルーラ!」と大声で二人分の名前を叫びます。
すると、二人の少女と少年がどこからともなく現れました。


緑色の、ゆるくウェーブがかかった髪を真っ赤なリボンで二つに束ねており、気の強そうな金色の瞳。
服は真っ白な、セーラー服のようなプリーツのワンピースで、白いタイツに真っ赤な靴。
手には魔法使いの杖を持った少女です。


少年の方は、少女と同じ緑色の髪と、金色の瞳。
顔立ちも少女にそっくりですが、少々負けん気の強そうな少女と違って、常ににこにこと笑っています。
服装は少女と同じ白が基調の半袖に、黒い膝丈までのズボン。頭には、銀色に光る小さな王冠。
そして胸からは羽のペンダントが下げられており、手には弓。


「「はい、お呼びでしょうか、ローズ様」」


どちらも歳は十三歳くらいでしょうか。しかし歳の割には大人びているようです。
引き締まった表情で、二人で同時に同じセリフを言い、ローズの前に跪きました。


「これからルーン様と私は、訳あって旅に出る。その間の留守、および王女の監視を任せたい」
「了解いたしました」
「そのような大役、我々には身に余るほどの光栄です」
「「必ずや、ルーン様とローズ様の望まれる働きをしてみせましょう」」


彼女らの態度は、ローズの言ったとおり忠実な部下そのもの。
しかし未だルーンは顔を引きつらせ、先程より遠い場所からそのやりとりを見守っていました。
彼のそんな様子にローズは振り返り、怪訝な顔をして言いました。

「ルーン様、どうしたのですか?
キーラとルーラに後は任せて、私たちは早く出発いたしましょう?」
「あ、ああ、そうだな。早く行こう。ああえっと、そういえばどこの街へ行けばいいのだ?」
「情報によると今、勇者一行はエントラスの街にいるようです」
「何? 意外と近いではないか?」


彼女の呼び掛けにしどろもどろに返す彼ですが、その一言で表情を引き締め直しました。
ローズの「というか私、昨日も街から帰ってきた直後に、言いましたよね?」という呟きは聞こえなかったようです。

しかしいつもの事なので、彼女もあまり気にしません。


「ええ、ですから急がなければなりません。さぁ、行きましょう?」

そう言いながらワープ魔法の魔法陣を空に描き、その場から消えました。
それに続いて彼も頷きながら魔法陣を描き、その場から消えます。

後にはキーラとルーラだけが残されました。



こうして彼らの旅は、始まりまったのでした。
そして忠実な臣下二人の実力、王女のこれからの行く末は、一体?



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